生殖補助医療ART体外受精・顕微授精・胚移植

高度な技術を要する体外受精、
患者様の適確なサポートも行っています。

KLC(神奈川レディースクリニック)は、患者様の体調や状況、そしてご希望を尊重し、
ひとり一人に最適な不妊・不育治療を行うクリニック。体外受精についても、この姿勢は変わりません。
高度な技術や複雑な治療を要する体外受精では、患者様の身体的・精神的な負担が大きくなりがちですが、
KLCでは治療の各場面で適確なサポートを心がけています。
治療の過程で生まれる様々な疑問や悩みを気軽に打ち明けられる個別相談もありますので、
必要に応じてご活用ください。

体外受精とは?

体外受精とは、体外に女性の卵子を取り出し、パートナーの精子と一緒にして受精させ、
できた受精卵を子宮に戻して着床を促す治療です。

卵子を取り出すことは「採卵」、受精卵(胚)を子宮に戻すことは「胚移植」と呼ばれます。
体外受精や顕微授精は、これらの高度な技術が求められる「生殖補助医療(ART)」に分類される不妊治療です。

妊娠までのプロセスは複雑で、不妊原因を特定するのは簡単ではありません。体外受精は、可能な限り不妊のリスク因子を回避しながら妊娠を目指すことができます。

体外受精の妊娠率

体外受精の妊娠率は、1回あたり全年齢の平均で、約40%程度とされています。回数を重ねるごとに妊娠率は増加傾向にあり、34歳未満であれば約80%の割合で胚移植3回目までに妊娠するといいます。40歳未満の場合は、約75%の割合で胚移植4回目までに妊娠に至るとされています。

年齢が上がるにつれて妊娠率は低下する傾向にあり、特に35歳を境に顕著な低下がみられます。

体外受精が適用になるのはどんなケース?

体外受精が検討されるのは、一般不妊治療からのステップアップや、体外受精でしか妊娠できないと判断された場合になります。
具体的にどのようなケースがあるのか解説します。

タイミング療法や人工授精からのステップアップ

年齢や不妊原因にもよりますが、不妊治療はタイミング療法や人工授精からスタートすることが一般的です。
人工授精は5〜6回で妊娠される方が多く、それ以降は統計的に妊娠が難しいとされています。
そのため回数を重ねても妊娠に至らなかった場合、ステップアップとして体外受精を検討することになります。

卵管性不妊の場合

卵管は、卵巣と子宮つなぐ細長い管状の器官ですが、何らかの原因で卵管が塞がっていたり、狭くなっている場合があります。この場合、卵子や精子が通過できず、受精ができないため自然妊娠が困難です。
そのため、体外で受精させる体外受精や顕微授精が有効な治療法となります。

免疫性不妊の場合

女性の体内で、精子に対する抗体(抗精子抗体)がある場合、精子の運動や受精を阻害してしまうことがあります。これが妊娠のプロセスに影響を及ぼし、妊娠が難しくなり体外受精を検討することになります。

男性不妊症の場合

精子の数や運動率が著しく低い、奇形率が高いなどの場合、体外受精が適用となります。軽度の場合は人工授精も有効ですが、運動率や濃度が基準を下回る重度の場合は体外受精が必要となり、受精方法が顕微授精となることが多いです。

不妊の原因が見つからない場合(原因不明不妊症)

不妊原因は、ある程度検査で調べられますが、必ずしも原因が特定できるわけではありません。不妊は年齢などを含め、さまざまな原因が複合的に重なっている場合もあります。
検査をしても原因が特定できない場合、年齢によっては始めから体外受精が推奨されることもあります。

2022年4月より体外受精が
保険適用となりました。

体外受精 保険適用の条件

  • 治療開始時において、女性の年齢が 43 歳未満であること
  • 卵管性不妊
  • 男性不妊(閉塞性無精子症等)
  • 機能性不妊
  • 人工授精等の一般不妊治療が無効であった場合

保険診療での体外受精開始前に必要なこと

不妊治療を保険で受けるには、婚姻関係または事実婚であることが条件となり、医療機関での確認が義務付けられました。
確認方法については、《婚姻確認についてのお知らせ》をお読みください。

また、治療計画について患者様とパートナーの方へ説明し、同意をしていただき、治療計画書にご署名頂く必要があります。
次の①②どちらかの方法で、お二人に説明を行います。

医師の指示が出たら

  • パートナーの方と一緒にご来院

  • 患者様のみご来院していただき、診察時、パートナーの方にはビデオ通話※で患者様と一緒に治療計画の説明を聞いていただく。

    ※LINE、Skype、Zoom 等、診察時にオンライン可能なもの

ビデオ通話の際には

  • パートナーの方とオンラインでビデオ通話ができる状態にして診察をお待ちください。(患者様ご自身の端末をご利用いただきます)
  • パートナーの方は運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書をご用意下さい。

体外受精の流れ

基礎体温と体外受精の
大まかな流れ

卵巣刺激(排卵誘発)

妊娠の確率を上げるために必要な最初のステップです。
より多くの卵子を十分に成熟させて採卵するため、ホルモン薬(飲み薬と注射)で排卵をコントロールしながら行います。
ホルモン薬の種類や投与方法などによって様々な方法があり、個々の卵巣の状態や患者様の希望に合わせて決定していきます。
詳しい内容ついては、こちらをご確認ください。

卵巣刺激の方法と特徴

クロミッド法
自然周期法
FSH/hMG+アンタゴニスト法
クロミッド+FSH/hMG+アンタゴニスト法
ロング法
ショート法
経済的負担軽いやや重い重い
採卵できる卵の数少なめやや少なめ多め
副作用弱いやや強い強い

当クリニックでは、患者様のご希望と年齢や体質的な適・不適合などによって、卵巣刺激の方法をご提案しています。
ショート法とロング法は、一度に採卵できる卵子の数は多いのですが、その分身体的な負担も大きいため、年齢的に実施できない場合もございます。

採卵・採精

成熟した卵子を排卵日の直前に体外に取り出します。この採卵と同じ日に採精も行い、受精の準備を整えます。

採卵日決定 〜 採卵・採精
までのスケジュール

採卵日決定 〜 採卵・採精までのスケジュール
詳しい内容についてはこちらをご確認ください。

受精

採卵した卵子を培養液の中で確認し、採精した精子は運動性の高い精子のみを取り出し、卵子と精子を一緒にして受精させます。
体外受精での受精方法は、下記の2通りがあります。

体外受精

シャーレ上で卵子と精子を出会わせる方法。精子が自ら卵子に侵入することで受精が起こります。

顕微授精

顕微鏡下で、細いガラス管を用いて精子を卵子に注入し受精させる方法。
精液所見が不良な男性不妊症や体外受精では受精卵を得られない場合に行います。
顕微鏡下で精子を高倍で観察し、形態を確認後顕微授精に用います。
また、当クリニックでは紡錘体(Spindle)を観察することができる機器を導入してより安全で確実な顕微授精を目指しています。

受精に関わる先進医療について

PICSI(Physiologic intracytoplasmic sperm injection:ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)

PICSIとは顕微授精の際にヒアルロン酸を含む培地を用いて、成熟精子の選択を行う技術です。 DNA損傷の少ない成熟している精子はヒアルロン酸に結合できるという特徴があります。
この特徴を利用してヒアルロン酸に接着した形態良好な精子を選択して顕微授精に使用します。 これによって、異数性胚の割合が低下し、流産率の低下が期待されます。
保険診療と併用される場合、顕微授精後に反復流産や着床不全がみられた方のみが対象となります。

※精液の状態によってはPICSIが行えない場合があります。その際、当技術 の費用は発生しません。
※PICSIをご希望された患者様に対しても、顕微授精の費用は別途発生いたします。

Zymōt(膜構造を用いた生理学的精子選択術)

Zymōtスパームセパレーター(以下、Zymōt)を用い、特殊な膜構造により良好な精子を選別します。 従来法よりも遠心分離の回数を減らすことで、精子DNAの物理的損傷を軽減できるといわれています。
体外受精(顕微授精)の際にZymōtで回収した精子を使用することで、培養成績や妊娠率の向上、流産率の低下が期待されます。
保険診療と併用される場合、反復して着床や妊娠に至っていない方のみが対象 となります。

※精液の状態によってはZymōtが使用できない場合があります。その際、当技術の費用は発生しません。
※Zymōtを使用して精子が回収できなかった場合、従来の処理方法で精子調整を行わせていただきます。その際、当技術の費用は発生します。
※本技術では使用する精液量が少ないため、従来の方法よりも回収できる精子数が少なくなる可能性があります。したがって、過去に体外受精を行っていた方が顕微授精の適応になる場合があります。

Zymōtの流れ

胚培養

体外受精・顕微授精、各受精法で得られた受精卵は、専用の培養液で培養します。
受精卵は、細胞分裂を開始すると「胚」と呼ばれます。通常移植されるのは、受精してから2〜3日後、もしくは5日目になります。その期間、インキュベーターと呼ばれる温度とガス濃度をコントロールし、体内と似た環境を作ることができる機械の中で培養します。

タイムラプスインキュベーター

当院ではすべての患者様に対して
タイムラプスインキュベーターを
使用しています

詳しく見る

胚移植

原則 1 個の胚を、子宮内に移植します。胚移植にはいくつかの方法があり、胚の質や患者様のご希望・ご都合に合わせて選択します。

分割期胚移植

受精後 2〜3 日の分割期胚を移植する方法で、古くから行われている方法です。

胚盤胞移植

受精卵を5〜6日培養し、「胚盤胞」と呼ばれる着床寸前の胚を移植する方法です。
移植あたりの妊娠率は分割期胚移植より高いと言われています。

二段階移植

分割期胚と胚盤胞を同じ周期で連続して移植する方法です。
最初の移植胚が子宮内膜を刺激し、次に移植する胚盤胞の着床率を改善する効果があるとされています。
ただし、双子など多胎妊娠の確率が高まります。
移植あたりの妊娠率は分割期胚移植より高いと言われています。

凍結融解胚移植(妊娠率を高める&次回の治療を軽減する)

受精卵(胚)を凍結保存し、融解後胚移植する方法です。
実は、子宮というというのは着床できる時期が限られており、その期間を逃すと良好な胚を移植しても着床しづらくなると言われています。
つまりは、妊娠というのは着床し得る期間・環境の子宮に着床し得る胚を移植しなければ成立しないという事です。凍結融解胚移植は、その期間をきちんと考慮し移植を行えるため、妊娠率が向上するとされ、現在日本では盛んに行われている移植法です。
受精卵(胚)の凍結保存は、移植胚以外に複数の良好胚が育った場合や、妊娠成立による副作用(OHSS)の重症化予防、妊娠率の向上など、その目的は幾つかあります。凍結することによる受精卵(胚)へのダメージをわずかながら認める場合もありますが、次の治療では卵巣刺激から胚培養までのステップを行わずに胚移植ができるため、身体的にも経済的にも負担が軽減され、有益な方法といえます。

凍結融解胚移植には次の2通りの方法があります。

①自然周期(排卵あり)

ご自身の排卵に合わせて胚移植の日程が決まります。通常、胚盤胞で凍結した胚を胚移植する場合は、排卵日から5日後が融解胚移植日となります。

排卵誘発の内服や注射をする場合もありますが、使用する薬剤が少なくてすむため、比較的からだに優しい方法といえます。

②ホルモン補充周期(排卵なし)

排卵しないよう月経中からホルモン剤を使用します。さらに黄体ホルモンの腟坐薬や注射を使用し、排卵後と同じ状態を作り出し子宮内膜を整えます。

ホルモン剤を調整することで胚移植日をある程度コントロールすることができ、胚のタイミングと子宮内膜のタイミングを合わせやすいことが特徴です。

胚移植当日の流れについてはこちらをご確認ください。

各移植をサポートする方法

着床率を高める【アシステッド・ハッチング】

ハッチングとは、孵化の意味であり、ヒトの卵も透明帯と呼ばれる卵の殻にあたる部分から孵化し着床に至ります。体外受精で妊娠しにくい 理由の一つに、透明帯が厚く硬いために孵化が起こりにくく、その結果着床が妨げられている可能性が考えられています。
アシステッド・ハッチングは、透明帯を薄く、もしくは開孔し孵化を促す技術です。針でスリットを作る機械的な方法や薬剤で表面を溶かす化学的な方法などありますが、 当クリニックでは最も胚を傷つける心配のないと言われているレーザー法を採用しています。

【エンブリオ・グルー】

エンブリオ・グルーはヒアルロン酸を豊富に含む胚移植用の培養液です。 ヒアルロン酸は卵胞液、卵管分泌液、子宮腔内に自然に存在しており、粘稠度が高く、培養液として用いると胚が子宮内膜と接着するのを促進すると考えられています。
使用することで着床率が上昇するという報告がされています。

【GM-CSF・ヒアルロン酸含有培養液】

・GM-CSFは細胞の増殖や分化を促進するグロスファクターとして、胚の細胞数を増加させます。
GM-CSFは卵管や子宮内膜で発現し、受精卵が受け入れることで機能しますが、習慣流産(不育症)の患者様ではそれらが発現していないことが知られており、 GM-CSF含有培養液を使用することで流産率の低下や妊娠率の向上が認められています。
・着床時の受精卵の表面と子宮内膜表面のヒアルロン酸受容体同士を結び付けるヒアルロン酸を含有しています。

この培養液で胚を培養及び移植した患者の妊娠継続率が4.5%、出生率が4.8%有意に改善したという報告があります。
当院では、PGT-Aを施行し良好胚が得られた方や、なかなか着床に至らない方・初期流産を繰り返す方などを主に対象として使用しています。
(但し、自費診療での胚移植周期のみ ¥33,000 )

黄体ホルモンの補充

黄体ホルモンとは

卵巣の中の卵胞は排卵すると黄体へと変化します。黄体からは黄体ホルモンと卵胞ホルモンが分泌されます。この2種類のホルモンは、子宮内膜を育てて着床しやすい環境に調整し、維持する作用をもっています。着床した場合は、黄体は妊娠黄体として妊娠12週頃まで存在し、黄体ホルモンを分泌し続けます。着床しなかった場合は、黄体は退縮し白体となります。基礎体温は上昇し、高温相を示します。

体外受精周期のため卵巣刺激、採卵をおこなうと体内からのホルモンが出にくい状況になってしまいます。そのため、胚移植後の着床率を高めるために、卵巣刺激の方法に関わらず、黄体ホルモンなどを補充して着床環境を整える必要があります。
黄体ホルモンは主にご自宅で腟坐薬を連日使用していただき、補助的に注射をする場合もあります。
凍結融解胚移植の場合も、特にホルモン補充周期の場合は妊娠黄体がないため、着床後も絨毛組織からの分泌が十分になるまでは黄体補充が必要となります。(妊娠8~10週頃まで) 同時にエストロゲン製剤を投与し、子宮内膜を増殖・肥厚させます。(主に、貼り薬と内服薬を処方します)

腟坐薬

妊娠判定

胚移植から約10日後に血液検査で判定を行います。
判定前に出血などがあっても、自己判断せず必ず「判定日」にはご来院下さい。

当院では現在、集団で開催する〔体外受精説明会〕は行っておりません。
体外受精へステップアップされる時点で、まず医師より『IVFオリエンテーション』という冊子をお渡しいたします。
また、ベビーカレンダー社の『ARTパッド』というコンテンツに その内容をナレーションと動画でまとめており、ご自身の携帯端末からご覧頂けます。初めて体外受精を行う方は必ずご覧ください。(通院中の方のみを対象としておりますので、院内に案内掲示をしております)

IVFオリエンテーション ARTパッド

生殖補助医療について詳しくは
こちら

生殖補助医療(体外受精)に関する
よくある質問

体外受精の重篤な副作用はまれですが、排卵誘発剤の使用により卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症するリスクがあります。卵巣刺激の薬や注射への反応は個人差がありますが、刺激によって卵巣が腫れて血液中の水分が血管の外へ漏れ出し、重度の場合腹水や胸水となり貯留するケースがあります。腹痛や便秘などが起こる場合もあります。その他、採卵による出血や感染なども、まれに生じることがあります。

40歳未満の女性の場合、3〜4回目で妊娠することが多いとされています。3回以上の胚移植で妊娠しない場合、着床障害の可能性が考えられます。

採血・排卵誘発剤の注射・採卵・胚移植の際に痛みをともなうことがあります。しかし、我慢できないほどの強い痛みはなく採卵時も麻酔下で行うため、強い痛みを感じることはありません。

KLCは、下記臨床に関する
実施の登録医院です。

  • 体外受精・胚移植およびGIFTの臨床実施に関する登録
  • ヒト胚および卵の凍結保存と移植に関する登録
  • 顕微授精の臨床実施に関する登録

日本産科婦人科学会への報告実施と
個人情報について

  • KLCは、生殖補助医療実施施設として日本産科婦人科学会に登録しています。
  • 日本産科婦人科学会では、生殖補助医療を受けた方について報告することが義務づけられており、KLCで生殖補助医療を受けた方についても症例報告をさせていただいています。
    その際、個人情報につきましては、十分な配慮(個人が特定されるデータとしないなど)をし、不正な目的での使用がないことをお約束します。

監修医師紹介

神奈川レディースクリニック名誉理事

小林 淳一 医師

2003年に当クリニックを開設し、患者様の個々のペースに合わせた無理のない医療を行い、ゆったりと相談にのれる親しみやすい産婦人科医を目指してまいりました。開院から20年が経過し、医療技術の進歩・新しい機器の導入、また、2022年から不妊治療の保険診療導入など、かなりこの分野も変化しております。
長年の経験を活かし、患者様に寄り添う気持ちでさらに努力を続け、皆様のご期待に沿えるよう職員一同励んでまいります。
よろしくお願い申し上げます。

経歴

昭和56年慶応義塾大学医学部卒業 同年 産婦人科学教室入局
昭和57年総合太田病院
昭和58年静岡市立病院
昭和59年慶応義塾大学病院
昭和62年済生会神奈川県病院
平成9年新横浜母と子の病院 IVFセンター長・副院長
平成15年神奈川レディースクリニック 開院

資格・所属学会

  • 日本産科婦人科学会 専門医
  • 母体保護法 指定医
  • 日本生殖医学会
  • 日本受精着床学会
  • 日本卵子学会
  • 日本IVF学会

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